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第6話 新しい校長?

 僕らが慌てて体育館に入るとシーサーにじろりと睨まれた。校舎に比べるとバランスがおかしいくらい新しくて立派な体育館には全校生徒がざわざわと並んでいる。僕らは三年生の列の後ろにおまけのようにくっついた。
「うわっ、亜里沙の髪の毛、外人みたいになってんぞ」
武がまた一段と明るくなった亜里沙の頭を指差しながら言った。僕は首を伸ばしてその黄金のヘルメットみたいな頭を見つつ吉田の姿を探した。
同じような後頭部でも吉田を見つけるのは容易だった。柔らかそうな髪の毛が首を動かすたびに揺れている。ずいぶんと離れているのに鼻の先に爽やかな香りが漂ってきた気がする。僕の視線が強すぎたのか彼女が振り返った。僕は慌てて首を引っ込めて、ごまかすように学ランの埃をはらった。

「今日、始業式終わったら東京の土産話大会しようぜ」
「土産はないのかよ」
僕が健二の頭を軽く叩くと、奴自慢の無造作ヘアが崩れてしまった。健二は少しむっとして髪型を直す。僕からすると、毎朝時間をかけてばっちり決めているのに無造作ヘアというネーミングがわからないのだが、健二を叩く時はボディじゃないと不機嫌になる。

 壇上に教頭が上がりマイクにふーっふーっと息をかけた。マイクはちゃんと入っているのに慎重派の教頭は指先でコンコンとマイクを叩いてやっと納得したようだった。話が始まるかと思いきや、教頭はしきりに壇上のそでを気にしていて、何度もそちらを覗き込む。生徒というのは基本的にみな式典の類をうざいものとしか思っていない。みんなが「早くしろよ」という無言のオーラを教頭に投げつける。そのオーラがこびりついたのか教頭が額をハンカチで拭った。表情がどこか強張っている。腹でも痛いのだろうか。

「えー、皆さんおはようございます。始業式を始める前に皆さんに…、あた、あたらしい校長先生をご紹介します」
ひどく裏返った声で教頭が言った。新しい校長? 僕らは顔を見合わせた。
「前の校長って定年だっけ?」
武が頬をかきながら首をひねる。もちろん校長の年齢など知らないが、定年だったら二年生の終業式にお別れ会的なものをやったはずだ。他の生徒達もざわつき始め、体育館には不安と好奇の声が響き渡った。シーサーに目を向けると教師達も寝耳に水といった様子で顔を寄せて話しこんでいる。

「前の校長先生はどうしたんですか?」
二年生の列から女の子の声がした。その一言に騒がしかった体育館の空気がぴたりと止まった。今まで全校生徒が集まって、こんな静寂が訪れたことがあっただろうか? みんなの視線が教頭に集まる。(つづく)

もくじ

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