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記事公開日:2025年4月16日
最終更新日:2025年4月16日
売掛金(売掛債権)は取引から一定期間(5年または10年)が経過すると時効により回収できなくなるリスクがあります。一方で、時効の中断または停止の措置を講じることで、債権を保護できます。
本記事では、売掛金の時効期間やその起算点を解説するとともに、時効の進行を止める方法や時効成立を防ぐための対策を詳しく解説します。
2020年の民法改正により、商取引で生じた売掛金は原則5年の時効により権利が消滅します。
例えば、自社が取引先に対して2020年5月1日にサービスを提供し、その代金の支払期限を翌月末日の6月30日に設定した場合、2025年6月30日に売掛金の消滅時効を迎えます。
5年の消滅時効を経過してもなお、売掛金の支払いを受けられないケースが存在します。このとき、取引先は時効成立を主張(援用)することで請求を断れます。
このような事態に陥らないよう、売掛金はできる限り期限内に回収し、遅くとも時効を迎える前に支払いを受けるよう対応しましょう。なお、民法改正前に生じた売掛金は旧民法の規定にそって対応することになります。
改正前の民法では時効が統一されていませんでしたが、新民法では売掛金の消滅時効期間が以下の通りに整理されています。
このように時効の起算点には2つの考え方があります。ここではそれぞれの違いについて詳しく解説します。
新民法では消滅時効期間として「債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年」が規定されています。つまり、権利を行使できることを認識した時点から5年で時効を迎えます。これを「主観的起算点」と呼びます。
一般的な商取引では契約書に支払期日が明記されるため、債権者は取引先に代金を請求した年月日を認識しているはずです。よって、売掛金の消滅時効は実質的に5年と捉えてよいでしょう。
主観的起算点に対し、債権者が権利を行使できる状態になった時点から起算する考え方を「客観的起算点」と呼び、新民法では消滅時効期間として「債権者が権利を行使することができるときから10年」が規定されています。
例えば、支払期限を2025年4月30日とする契約を結んだ場合、この日から10年が時効になります。
債権者は支払期日が過ぎると代金を請求できるため、客観的起算点は支払期日と同義と捉えてよいでしょう。
契約に支払期限が定められていない場合、いつでも権利を行使でき、契約日が時効の起算点となります。
業務委託契約などの請負代金の時効は、成果物を納品したときから始まります。修正などが発生した場合には、最終的な完成品を納品した日が起算点となるため、取引する際には注意が必要です。
例えば、自社から発注して4月30日に納品された後、修正を経て5月10日に検収した場合、5月10日が消滅時効の起算点となります。
売掛金の時効は中断により消滅を阻止できます。新民法においては「更新」という言葉で規定されています。
消滅時効を中断(更新)するためには、法的手段を活用する手立てがあります。法的手段の措置を講じると、時効期間が一度リセットされます。この場合の起算点は時効期間がリセットされた時点です。また、債務者に承認を求める方法もあります。
ここでは、売掛金の未回収リスクを最小限に抑え、消滅時効の中断(更新)によって資金繰りを維持するためのポイントを解説します。
売掛金の未回収で債権者が損失を被らないよう、債務者に対して裁判上の請求を行い、時効の中断(更新)を主張する方法があります。
この方法であれば、裁判が終了するまでの間、時効の完成が猶予されます。判決が出て権利が確定すると中断(更新)され、確定した時点を起算点として時効期間が再開されます。
なお、仮に権利が確定しなくても、判決で主張が却下されたり裁判が取り下げられたりした時点から6ヵ月間は時効の完成が猶予されます。
債務者に対して支払督促を行うことで時効を中断(更新)する方法もあります。支払督促とは、債権者が裁判所に申し立て、裁判所が債務者に支払いを督促する手続きです。
債務者に対して支払督促が通達されると、債権者による権利行使が確認されます。これにより時効が中断(更新)されます。
売掛金の消滅時効を中断(更新)する方法の一つに、民事調停の申し立てがあります。民事調停とは、裁判所が関与し、裁判官や調停委員を介して当事者同士が合意を目指す話し合いの手続きです。これにより、時効の完成が猶予されます。
調停が成立すれば、その内容は「調停調書」にまとめられ、法的効力のある債務名義となり、債権者は強制執行を行うことが可能になります。さらに、時効期間も新たに5年間延長されます。
債務者の財産(現預金や不動産など)を差し押さえて債権を回収する「強制執行」という手段も可能です。
強制執行の申し立てにより、時効の中断(更新)は手続きが終了した時点で有効になります。強制執行を受けた債務者が支払いに応じるかどうかにかかわらず、申し立ての手続きが完了すれば中断(更新)されます。
なお、強制執行の申し立てに際しては、支払督促や訴訟の判決を確定させておく必要があります。
債務者が未払いになっている売掛金の存在や支払義務を認めることを「債務者の承認」といいます。債務が承認された時点で時効が中断(更新)されます。
債務の承認になるケースは以下の通りです。
売掛金の一部が支払われた場合、債務が承認されたとみなされます。
債務者が債務の存在を認める書面に署名または押印した場合、承認されたとみなされます。
債務者が支払遅延を詫びたり分割払いでの支払いを申し出たりする旨の内容を債権者に送った場合も、債務が承認されたとみなされます。
売掛金の時効は停止により消滅を阻止できます。新民法においては「完成猶予」という言葉で規定されています。
売掛金の消滅時効を停止(完成猶予)する方法には、仮差押えや仮処分、郵便での催告、書面での合意があります。
ここでは、各手続きを紹介するとともに、時効を一時的に延ばす方法を解説します。
仮差押えや仮処分とは、裁判所を通じて債務者に対して命令を出してもらい、債務者が財産を処分できないようにする手続きです。仮差押えや仮処分が終了した時点から6ヵ月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。
ただし、仮差押えや仮処分だけでは時効を中断(更新)できません。仮差押えや仮処分により時効期間を猶予した上で、法的手段などを講じて訴訟を提起して時効を中断(更新)しましょう。
催告とは、裁判以外の方法で取引先に債務の支払いを求める手続きです。郵便局が差出人・宛先・内容・差出日時を証明する「内容証明郵便」で催告書を送付する方法が一般的です。
催告により時効は6ヵ月間猶予されますが、催告だけでは時効を中断(更新)できません。催告で時効を一時的に延ばした上で、時効の中断(更新)が生じる行為として法的手段などを検討しましょう。
民法改正により、新たな時効完成猶予の方法として「協議を行う旨の書面での合意」が導入されました。
これは、債権者と債務者が売掛金の支払いに関して話し合いを続けることに合意すれば、時効の完成が1年間猶予される制度です。
従来は時効を止めるために訴訟が必要でしたが、民法改正により法的措置を取らずに協議を継続できるようになりました。法的手段などを講じる前の対策として検討してみるとよいでしょう。
取引先からの売掛金の支払いが確認できない場合、自社と取引先のどちらに原因があるのか見極めましょう。
「未払い」というと請求された側が支払っていないという印象を抱きがちですが、自社から取引先に請求を送付し忘れている可能性があります。ここでは、未払い発生時の対応方法を解説します。
売掛金の支払いを確認できない際、請求書の未発行や未送付というケースが想定されます。請求書の発行または送付を失念していた場合は以下のように対応しましょう。
請求書の未発行や未送付を把握した場合、自社に報告して判断を仰ぎましょう。その後、取引先に謝罪した上で手続きを開始しましょう。
請求書が未発行だった場合は請求書を新規に作成し、発行した請求書を送り忘れていた場合は再発行した上で、謝罪文を添えて送付しましょう。
請求書の未発行や未送付を繰り返すと、自社の信用を失いかねません。そのため、未発行や未送付が起きた原因を調べ、再発を防止する方法を検討しましょう。
取引先に請求書を送付済みにもかかわらず売掛金が支払われない場合は、取引先側に原因があると考えられます。売掛金の未回収を確認した場合は以下のように対応しましょう。
取引先に連絡し、未払いになっている状況を伝えます。未払いの原因がわかり次第、対策を検討しましょう。
取引先と連絡がつかない場合は、内容証明郵便で催告を行います。回収見込みを判断する目的で、財務状況を把握できる決算書を要求するのも一案です。
催告などを通じて取引先に連絡が取れた場合は、支払いの方法や期日を話し合います。この際、合意した内容を記録した文章を残しておきましょう。
催告を行っても取引先が支払いに応じない場合は、必要に応じて支払督促や民事調停などの法的手段を講じます。
なお、売掛金回収の流れについては下記の記事をご覧ください。
売掛金回収の方法とは?未払金回収に必要な手順や手続きを解説!
未払いとなっている売掛金の消滅時効を迎えてしまうと、貸倒損失が生じてしまい、自社の経営に影響が出ます。消滅時効の成立を阻止するため、各取引で請求書の作成日や送付日、入金状況を正確に把握し、適切に債権を管理しましょう。
未回収の売掛金を確認した場合は、まず取引先と交渉した上で、それでも解決しない場合には時効を中断(更新)または停止(完成猶予)する措置を行い、可能な限り未回収と消滅時効の成立を防ぎましょう。
売掛金には5年または10年の時効があります。自社の財務状況を安定的に維持するため、消滅時効の阻止は事業運営にとって重要です。
一方で、企業では日頃から多くの取引先と契約を結び、取引により発生した債権は増え続けます。また、消滅時効の成立を防ぐためには適切な対応が肝要ですが、債権管理は業務過多になりがちです。
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