取引先管理業務の効率化
取引先の与信や管理にかかる時間を削減することで業務に集中できます。
記事公開日:2024年10月25日
最終更新日:2025年1月17日
取引では商品やサービスの提供後、一般的にその対価として代金が支払われますが、その代金に当たる売掛金が未払いのままとなってしまう事態が起こり得ます。そんなとき、どう対処すればいいのでしょうか。
売掛金の回収が遅れると、企業の財務が悪化する原因となります。売掛金を適切に回収するため、そもそも気をつけるべきこと、そしてケース別の対処策や基本的な流れ、法的手段を解説します。
商品やサービスの提供後、代金の回収ができなかったり遅れたりすると、企業の財務が悪化します。売掛金の未回収はどんな業界の取引でも起こり得ます。
そのため、新規で取引を始める前に相手先の経営状況を把握しましょう。
仮にその相手先の経営が厳しい状況にあると判断できた際には、売掛金が未回収となる事態を避けるため、取引に応じないというのも選択肢の一つです。
いざ取引が始まった後は、期日通りに売掛金を回収できるよう、支払い期日や金額をきちんと相手先に伝えましょう。
売掛金の回収が遅れた場合に備え、取引先の担当者にすぐ連絡できるよう、電話番号やEメールアドレスなどの連絡先も確認しておきましょう。
売掛金の回収はとにかくスピードが重要です。売掛金の回収が遅れると、企業の財務が悪化し、さらには他の取引先への支払いに影響が出る可能性もあります。では、もし売掛金の回収に遅れが生じたら、どうすればいいでしょうか。ケース別に対処策を見ていきましょう。
取引先から売掛金を回収できていない状況で、さらに商品やサービスを提供してしまうと、未回収の売掛金が増える一方です。
よって、もし売掛金の回収が遅れ始めたら、未回収分が支払われるまで商品やサービスの提供を一時的に停止する選択肢を検討しましょう。
取引先に対して未払いの債務があれば、未回収の売掛金と相殺できます。相殺は債権者の一方的な意思表示で可能であり、債務で相殺する場合は取引先に事前に通知すれば問題ありません。
例えば、未回収の売掛金が100万円あったとします。一方で、取引先への未払いの債務が100万円あった場合は、差し引きゼロで相殺できます。
売掛金と買掛金の金額が同額ではなくても相殺は可能です。未回収の売掛金100万円に対し、未払いの債務が50万円だった場合、売掛金と買掛金の相殺で50万円を回収したことと同じ効力が発揮され、未収金の額を小さくできます。
よって、互いに売掛金と買掛金がある場合は、取引先に対して支払い義務のある買掛金の有無を確認してみましょう。
売掛金の未回収を把握した場合、取引開始時に作成した基本契約書や個別契約書などを確認し、「期限の利益喪失条項」の記載があるかどうか注意して見ましょう。同条項は、債務の支払いが遅れた場合において、期限を迎えていない債務についても支払う義務が生じることを明文化したものです。
例えば、1月から4月までサービスを提供し、分割で25万円ずつ支払われ、4ヵ月合計で売掛金100万円の契約だったとします。契約に関する書類に同条項が記載されていれば、1月分の支払いが遅れた時点で4ヵ月分の売掛金100万円を請求できます。ただし、同条項の記載がなければ、請求できるのは1月分の売掛金のみです。
理想はすべての売掛金を期日までに回収することです。仮に取引先の財務体質が健全であったとしても、相手方の会計処理が遅れるなどの理由で期日までに売掛金を回収できないケースは起こり得ます。そもそも、売掛金の回収はどのように進めればいいのか。ここでは基本的な流れを確認していきます。
売掛金が期日までに支払われなかったとしても、取引先が単に処理を誤っただけの可能性があります。このようなケースを考慮し、まず取引先に連絡して状況の把握に努めましょう。処理ミスがなく、提供した商品やサービスにも問題がないにもかかわらず、売掛金が支払われていない場合には取引先に支払いを催促しましょう。
売掛金が支払われない場合、もしかすると取引先の経営が悪化しているかもしれません。こうしたケースを想定し、財務体質や資産状況を把握する目的で、取引先に決算書の提供を求めることも選択肢の一つです。保有資産を把握しておけば、差押えによって売掛金の回収が可能かどうか判断する材料になります。
売掛金を支払わない取引先から一定の協力が得られる場合には、未払いの債務があることを認める「債務確認書」にサインしてもらうように依頼しましょう。債務確認書を作成しておけば、売掛金の回収に際して万が一、法的手段が必要になった際に証拠となります。
売掛金の未払いを伝えても対応されない場合は、取引先に対し、内容証明郵便で催告書を送付しましょう。催告書には未払い代金の内訳と金額、期日を明記し、取引先に債務がある旨を伝えます。売掛金の未払いが続くようなら、法的手段も辞さない旨を追記しても構いません。
催告書を送付後、取引先と交渉する機会を設けることも検討してみましょう。交渉においては、売掛金の金額や支払い期限などを確認し、合意できた内容を残す目的で契約書とは別に新たに書類を作成します。交渉の難航が予想される場合は代理人に弁護士を立て、取引先との合意を目指しましょう。
取引先の手元に商品が残っている場合は、売掛金の未払いを理由に商品の引き揚げを検討してみましょう。ただし、取引先が承諾しない場合、この手段は適切ではありません。取引先の承諾なく引き揚げると犯罪になります。トラブルを回避するため、取引先が承諾した旨を明記した書面を作成しておきましょう。
売掛金(=代金)が未払いにもかかわらず、取引先が別の会社に商品を転売するケースがあります。もし、転売先から取引先に代金が支払われていない段階なら、転売先から支払われる代金の入金口座を取引先の口座から自社の口座に変更してもらう選択肢を検討しましょう。
売掛金の回収に際して、取引先から協力を得られなかったり、取引先と連絡が取れなかったりする場合、どのようにすればいいのでしょうか。手っ取り早いのは訴訟ですが、それはあくまで最終手段です。訴訟以外にも取りうる法的手段があります。ここでは、法律に基づく売掛金回収方法を網羅的に解説します。
取引先との合意書として、強制執行を認諾する旨を付した「公正証書」の作成を検討しましょう。公正証書とは、公証人が法律に基づいて作成する公文書です。公正証書を作成しておけば、債務不履行時に訴訟を起こさずとも、債務者である取引先の財産に対する強制執行が可能となります。
仮に売掛金の支払い方法で取引先と和解できる場合は「即決和解」を検討しましょう。当事者同士の和解内容に基づいて簡易裁判所で和解調書を作成し、正式に和解を成立させるのが即決和解です。正確には「訴え提起前の和解」といい、公正証書と同じく強制執行力があります。
当事者間で合意できなければ、「民事調停」の利用を検討しましょう。簡易裁判所で調停委員の立ち合いの下、当事者同士が話し合って合意を目指し、調停が成立すると調停調書が作成されます。裁判のように勝ち負けを決めるわけではありませんが、調停調書にも強制執行力があります。
迅速に勝訴判決と同じ法的効果を得られる手段として、「支払督促」の手続きを検討しましょう。支払督促とは、裁判所から取引先へ支払いを督促する文書を送付してもらう制度です。これが確定すれば訴訟による判決と同じ効力を得られ、訴訟に比べて自社の負担を小さくできるでしょう。
どんな手段を講じようと取引先が売掛金の支払いに応じない場合、財産を強制的に回収することになりますが、取引先が財産を処分してしまっては元も子もありませんから、訴訟を起こす前に「財産の仮差押え」を行いましょう。これにより債権回収までの間、取引先の財産を事前に保全できます。
「財産の仮差押え」が完了したら、取引先に対して訴訟を起こしましょう。「通常訴訟」と「少額訴訟」があり、少額訴訟は自社のみで対応できる一方、通常訴訟では弁護士に依頼するのが一般的です。売掛金が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円超の場合は地方裁判所で行われます。
訴訟を起こして勝訴すれば、取引先は売掛金の支払いに応じるほかありませんが、それでもなお取引先が支払わない場合には「強制執行」へと移り、取引先が有する債権や預金、不動産などを差し押さえて売掛金を回収します。強制執行には事前の準備が必要となるため、弁護士に相談するのが一般的です。
売掛金の回収が遅れると、資金繰りに影響が生じ、自社の財務が悪化する原因になる可能性があります。売掛金を回収できたとしても、法的手段をとった場合には自社の経費がかさみ、裁判になれば対応する時間も増えていく一方です。万が一に備え、売掛金回収の対処に関して正しい知識を身につけておくことが肝要です。
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