ファクタリングと債権譲渡の違いとは?債権譲渡登記の仕組みや注意点も解説

記事公開日:2025年3月25日

最終更新日:2025年3月25日

支払期日前の売掛債権を現金化できる「ファクタリング」は近年、万が一の資金調達手段として注目されています。

この記事では、ファクタリングと債権譲渡について各々の特徴や違いとともに、ファクタリングにおける債権譲渡登記の必要性や仕組み、メリット・デメリットを解説します。

さらに、民法改正により可能となった「譲渡制限特約付き債権」の譲渡、債権譲渡を行う際の注意点も解説します。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、売掛債権(売掛金)の支払期日より前に現金を得られる資金調達方法です。

ファクタリングに関する国際組織FCIの統計データ別ウィンドウで開きますによると、取引数は増加傾向にあります。ファクタリングが資金調達の手段として国際的に注目を浴びる中、日本でも取引数が伸びています。

ファクタリングには2種類あります。

  • 買取型ファクタリング
  • 保証型ファクタリング

契約は以下の2種類です。

  • 2者間ファクタリング
  • 3者間ファクタリング

債権譲渡とは?

債権譲渡とは、代金を受け取る権利(債権)を第三者に譲り渡す制度です。

例えば、自社がA社に商品を販売し、未回収の代金がある場合、A社がB社に対して債権を持っていれば、その債権を自社が譲り受け、B社から直接回収できます。これにより、自社はA社の資金難に関係なく資金を回収できます。

要するに債権譲渡とは、債権の内容を変更せずに取引相手を変える仕組みであり、売掛債権を担保に資金を調達する方法の一つです。一方、ファクタリングは売掛債権を売却する金融サービスであり、広義には債権譲渡の一形態といえます。

債権譲渡禁止特約の改正

一般的な取引契約書では、契約上の権利義務に関して第三者に譲渡してはならないという規定が明文化されている場合がほとんどです。

以前は譲渡禁止特約の付いた債権を譲渡できませんでしたが、民法改正により譲渡できるようになりました。

債権譲渡が行われた場合、債務者は以下のいずれかを選択できます。

  1. 1.譲渡を認めて譲受人に支払う
  2. 2.元の債権者に支払う
  3. 3.供託する

ただし、譲渡禁止特約が付いている売掛債権であっても、売掛先や利用企業の信用力に疑問を持たれてしまった場合は、ファクタリング業者から買取を拒否される可能性があります。

また、譲渡禁止特約を理由にファクタリングを認めたくない売掛先もあるため、譲渡禁止特約付きの売掛債権をファクタリングする際は、売掛先への配慮が欠かせません。

ファクタリングと債権譲渡の違いは?

ファクタリングと債権譲渡は、どちらも売掛債権を第三者に譲渡する点では共通していますが、実際には似て非なるものです。

利用目的や契約形態、受け取れる金額、手数料が異なるため、あらかじめファクタリングと債権譲渡の違いを理解しておきましょう。

ここでは、それぞれの特徴からファクタリングと債権譲渡の相違点を解説します。

利用する目的

ファクタリングは基本的に資金調達が目的である一方、債権譲渡の目的は主に債務の弁済です。

企業が資金を迅速に確保したい場合、ファクタリングを利用して支払期日前の売掛債権を売却し、調達資金は新事業への投資などに対して自由に使えます。

債権譲渡は主に、支払期日を過ぎても回収できていない債権を処理する目的で行われ、債権が事業投資に充てられることはありません。

また、ファクタリングでは売掛債権のみ扱えるのに対し、債権譲渡では売掛債権に限らず貸付金債権なども利用できることが特徴です。

契約の形態

ファクタリングには、自社とファクタリング業者で契約する「2者間契約」、自社・取引先・ファクタリング業者を交えた「3者間契約」があり、契約形態をどちらか一方から選べます。

一方で債権譲渡は、自社と債権を譲渡する取引先の双方同意のもとに締結後、第三債務者へ対抗要件を具備する必要があります。

つまり、債権の譲渡に当たって債務者の同意が必要不可欠となり、①債権者(譲渡人)②債権を取得する第三者(譲受人)③債務者(売掛先)による「3者間契約」も必須です。

受け取る金額や手数料

ファクタリングを利用する際は基本的に手数料がかかります。売掛債権を業者に売却後、債権の額面から手数料を差し引いた金額を受け取れます。

債権譲渡は手数料が無料の場合もあります。ただし、最終的に受け取れる金額が契約時点ではわかりません。売掛先から債権を回収できないケースがあるからです。

ファクタリングは買取が成立すれば資金を確保できますが、債権譲渡で回収できない場合は手数料だけかかってしまうでしょう。

ファクタリングにおける債権譲渡登記とは?

ファクタリングには「債権譲渡登記」の手続きが必要になることがあります。ここでは、債権譲渡登記の基本とともに、債権譲渡登記を行う必要性についても解説します。

債権譲渡登記とは

債権譲渡登記とは、債権の譲渡を公に証明するため法務局に届け出て、登記簿に記載することを指します。登記を行えば、債務者以外の第三者に対して債権の譲渡に対抗できるようになります。

ファクタリングで債権譲渡登記を行った場合、利用企業からファクタリング業者に売掛債権が譲渡されたことが公的に明らかになります。

債権譲渡登記の必要性

ファクタリングにおける債権譲渡登記は、特に2者間ファクタリングで多く利用されています。

2者間ファクタリングは、売掛先を介さずに自社と業者のみで契約を結ぶシンプルな仕組みです。そのため、債権の所有者を明確に証明することが難しいです。

よって、業者は法的な証拠として債権譲渡登記を求めることが一般的です。一方、3者間ファクタリングでは売掛先も契約に関与するため、債権譲渡登記は不要です。

債権譲渡登記のメリット

ファクタリングにおける債権譲渡登記は、業者にとっても利用企業にとっても利点があります。ここでは、法的な証拠として有効な債権譲渡登記を行うことで生まれるメリットについて解説します。

債権の二重譲渡を回避できる

債権譲渡登記を行わないまま取引した場合、ファクタリングを利用した企業が同じ売掛債権を別の業者に二重譲渡するリスクがあります。

二重債権になると、業者が売掛債権を回収できず、損害を被るおそれがあります。譲渡の事実を公的に証明できる債権譲渡登記を行えば二重譲渡を回避できるため、業者が損失を出すリスクを回避できます。

特に、利用企業と業者だけで契約を交わす2者間ファクタリングにおいてメリットがあります。

すばやい資金調達が可能になる

ファクタリングにおける債権譲渡登記は、利用企業にもメリットがあります。

債権譲渡登記を行えば法的に売掛債権の所有者を証明できるため、債権を買い取る業者にとってはリスクが低くなります。よって、審査に通りやすくなったり、手数料が低くなったりする可能性があります。

契約形態が2者間ファクタリングであれば、売掛先から承諾を得る必要がないため、迅速に資金の調達が見込めるでしょう。

債権譲渡登記のデメリット

債権譲渡登記の手続きは、ファクタリングを利用する企業にとって利点がある一方で、手数料に加えて別途費用が発生するほか、自社に対する印象を悪化させるリスクがあります。ここでは2つのデメリットを解説します。

登記費用の負担が必要になる

債権譲渡登記には登録費用がかかり、ファクタリングを利用する企業が負担します。

登録免許税は1件につき7,500円もしくは15,000円、司法書士に代行を依頼した場合は別途報酬として数万円〜10万円程度の費用を要します。

サービスを利用する際は、手数料以外にも費用が発生することを念頭に置いておきましょう。

取引先などに債権譲渡を知られるリスクがある

自社がファクタリングを利用する際に債権譲渡登記を行った場合、その事実は登記簿に記載されます。

登記簿は法務局で申請すれば誰でも閲覧できます。2者間ファクタリングを利用すれば売掛先に知られずに債権を譲渡できるものの、取引先が自社の登記簿を閲覧した場合、ファクタリングの利用を把握される可能性があります。

この場合、ファクタリングの利用を知った取引先が自社の経営状況を懸念するかもしれません。

債権譲渡登記の申請

債権譲渡登記は、東京法務局民事行政部債権登録課(東京都中野区)に申請する必要があります。申請方式は書面方式・事前提供方式・オンライン方式の3つがあり、窓口・郵送・オンラインのいずれかで提出できます。

また、代理人からの申請が認められているため、司法書士への依頼も可能です。詳しくは法務省ホームページ別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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ファクタリングは、企業にとって資金調達を迅速に行う手段の一つです。ファクタリングには種類や契約形態が複数あり、利用する際には様々な点に注意が必要です。

ファクタリングと債権譲渡の相違点、ファクタリングにおける債権譲渡登記の必要性やメリット・デメリットを踏まえ、資金調達の手段としてファクタリングを選択肢に入れておけば、突発的な資金需要に応えてくれる強い味方となるはずです。

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