取引先管理業務の効率化
取引先の与信や管理にかかる時間を削減することで業務に集中できます。
記事公開日:2024年11月22日
最終更新日:2025年1月17日
取引先の与信限度額を設定する際には、自社の経営状況に応じた基準の策定が必須です。では、与信限度額の設定はどのような流れで進めるのでしょうか。
設定する際には取引先の信用力をどのように測り、どんな点に注意を払えばよいのでしょうか。そのうえで、どういった基準で決めるべきなのか。
情報収集の方法や策定基準の計算式などを紹介しながら詳しく解説します。
企業間で商取引を進める際、与信限度額を決めます。ここでは与信限度額の概要を確認していきましょう。
「与信」とは、取引先に信用を与えることを意味します。取引先をどこまで信用してよいのか。取引先とどの程度の金額まで取引してよいのか。「与信」ではこうした取引先の信用度合いを確認する手続きを行います。
「与信限度額」とは、取引先ごとに設定された上限額のことで、「与信枠」とも呼びます。一般的には、信用度が高い取引先は「与信限度額」も高くなり、信用度が低ければ「与信限度額」も低く設定されます。
与信限度額の設定には明確な基準が求められ、さまざまな取引先に対して一定のルールに基づいて調査を実施します。具体的には、取引先の経営環境や財務状況などを調べ、取引のリスクやメリットを見極めて最終的に判断を下します。
与信限度額を設定しないまま取引を始めてしまうと様々なリスクが生じます。
例えば、資金繰りが芳しくない取引先に対して与信限度額を設定しなかったとします。この場合、取引先が運営資金に見合わない額の商品を購入し、その後債権の支払いに応じなかったり、代金を支払わないまま倒産したりするリスクが考えられます。
あらかじめリスクを避けて自社の財務状況を健全に保つためにも、与信限度額の設定は必須と言ってよいでしょう。
取引先からの代金未回収を回避するため、与信限度額を設定するまでの流れを確認しておきましょう。
まず、取引先の経営環境や財務状況を調べ、可能な限り情報を収集します。公開情報に加え、企業の風評や経営者の人柄、生産拠点の管理状態など、可視化されにくい情報も合わせて集めましょう。
次に、取引先に関して集めた情報をもとに分析します。財務諸表に怪しいところはないか、取引先に悪い評判が立っていないか、経営者の手腕に問題はないのか、といった観点で審査・評価を行いましょう。
続いて、取引先に見合った金額を見極めて与信限度額を設定します。取引先の資金繰りに問題が見られず、かつ成長性が高いと評価できれば、信用度が高いとみなして「与信限度額」を高く設定します。
「与信限度額」を設定後、取引先と契約条件を交渉します。交渉の場で初めて知る情報があるかもしれないため、評価内容を念頭に置きつつ、必要に応じて「与信限度額」を見直します。
与信限度額を設定するまでの流れを確認したところで、一般的な設定基準を解説します。その基準は3つに大別され、それぞれ計算式も説明します。
取引先に対する売掛債権が未回収の状態でも自社の経営を維持できるよう、自社の売掛債権を基準に与信限度額を決める方法です。「自社の売掛債権 × 一定割合 × 格付けウェイト」という計算式で算出します。
「一定割合」は、万が一債権が回収できなかった場合でも企業が耐えうる範囲を表します。「格付けウェイト」は、与信管理において各企業に設定された格付けの重要度を示すもので、これにより与信額が適正であるか評価されます(以下同様)。
自社が所有する資産の総額から負債の総額を差し引いた「純資産」を基準に与信限度額を決める方法です。この場合は「自社の純資産 × 一定割合 × 格付けウェイト」という計算式で算出します。
取引先が商品やサービスを購入し、未払いとなっている「仕入債務」を基準に与信限度額を決める方法です。この場合は「取引先の仕入債務 × 一定割合 × 格付けウェイト」という計算式で算出します。
与信限度額の設定は与信の精度に依存する側面があります。そのため、以下のポイントを押さえておきましょう。
与信限度額を決める際には取引先の財務状況などを調べ、自社が取引する相手として妥当性があるかどうかを見極めつつ、適切な金額を算出する必要があります。
こうした作業には時間も人員もそれなりに必要です。加えて、明確な基準に基づいて与信限度額を設定する必要があるため、客観的に判断する能力も要求されます。
このような観点から、営業部門などとは別に、与信管理を専門とする部門や部署を設置したほうがよいと言えます。
専門部署の設置にはコストがかかり、与信管理に長けた人材の獲得も必須になり、多くの企業では独立部門の設置が難しいのが現状ではありますが、自社の経営を円滑に行うためには欠かせない要素の一つと心得ましょう。
一万円札の顔となった渋沢栄一は「事業には信用が第一である」という言葉を残しています。この言葉に代表されるように、企業の信用力は経営に不可欠です。信用力を測るには情報が必要となり、取引先の与信限度額を決める際も同様です。
企業分析と言えば一般的には財務諸表が対象になりますが、例え業績が良くても評判が芳しくない企業は存在します。つまり、情報を収集する際は、客観的に把握できる内容に加え、数字やデータに依存しないことも肝要といえます。
「備えあれば憂いなし」と言うように、自社の情報収集能力が不足していると判断される場合には外部サービスの利用を検討し、しっかり情報収集を行って与信限度額を設定しましょう。
与信限度額の設定は、自社の情報収集力だけに頼ることなく、様々な観点で取引先を分析して評価した上で行うべきです。とはいえ、自社のリソースだけではまかなえない場合も想定されます。そんなときは、外部サービスの活用を検討してみるとよいでしょう。
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