売上債権とは?未回収のリスクと管理・回収方法をわかりやすく解説

記事公開日:2025年1月24日

最終更新日:2025年1月24日

企業間取引では「売上債権」が発生します。「売上債権」とは、自社が取引先に商品やサービスを提供した際、後日受け取るべき代金を示す債権のことをいいます。

「売上債権」での取引にはメリット/デメリットがあり、リスクも伴います。この記事では、仕訳の際に用いられる勘定科目、売上債権に関する経営管理指標、取引先の管理方法、売上債権の回収方法などについて解説します。

売上債権とは

「売上債権(売掛債権)」とは、企業が商品やサービスを提供した際、取引先から後日受け取るべき代金を示す債権のことを指します。後日まとめて請求して入金してもらう掛け取引にすることで、請求・支払いに関する業務を効率化できるメリットがあります。さらに、買い手の立場から見ると、一定期間後にまとめて後払いする仕組みの売上債権で取引すれば、手元に現金を用意できない場合でも新しい取引を始められます。

売上債権の勘定科目

「売上債権」は、勘定科目ごとに管理する必要があります。仕訳の際に用いられる勘定科目は、売掛金、受取手形、電子債権の3つです。また、取引先の倒産などにより「売上債権」の回収が不能となり、貸し倒れになるリスクがあります。そのため、簿記では「売上債権」に対して「貸倒引当金」を計上する必要がある点に注意が必要です。なお、通常1年以内に支払われるため、貸借対照表では流動資産の部に分類されます。

売掛金

最も一般的な「売上債権」であり、請求書を発行してから入金を受けるまでの未回収代金を計上します。

掛け取引によって発生し、取引先ごとに請求・入金管理を行うことが一般的です。近年では売掛金管理の専門ソフトで管理する方法が普及しています。

互いの信用により成立するため「信用取引」とも呼ばれ、貸し倒れのリスクを防ぐ目的で取引先ごとに信用限度額を設けます。

「売掛金」の詳細は下記リンクをご覧ください。

受取手形

「受取手形」は、サービスの対価として一定期間後に指定された金額を受け取る権利で、代金として受け取った約束手形を計上する際に用いる勘定科目です。相手が発行した証書を受け取る点が売掛金とは異なります。

「手形」とは、紙面上で「○年○月○日に指定金額を支払う」と約束した有価証券です。つまり、取引相手から受け取る約束手形や為替手形のことを「受取手形」といいます。

「受取手形」には支払日が設定されています。設定された支払期日に手形の額面金額を金融機関で受け取ります。

「受取手形」を受け取ることで売上は計上され、期日前に手数料を支払い、現金化することもできます(手形割引)。

また、手形決済日を一元的に管理するため、「受取手形帳」を作成しておくとよいでしょう。

電子債権

電子債権システムを活用した取引による売上債権を指し、紙の手形を発行する代わりに電子データで債権を管理する際に用いる勘定科目です。

電子債権は口座間送金決済による支払いが原則です。支払期日を迎えると、債務者の口座から債権者の口座へ自動的に送金されます。

オンラインで権利移転が手軽に行えるため、債権を第三者に譲渡して資金繰りを円滑化することも可能です。ペーパーレス化により業務効率の向上も期待できます。

また、現金化可能な電子債権を把握できるよう、管理台帳を作成しておくとよいでしょう。

経営状態を把握するための売上債権に関する指標

企業間では売掛を前提とした取引が一般的となるため、売上債権が発生します。一方で、売上債権の回収が滞ると資金繰りに影響が出て、事業に悪影響が出かねません。

こうしたリスクを回避し、財務体質を健全に保つ観点で、売上債権の回収効率性を測る「売上債権回転率」と「売上債権回転期間」という指標が役立ちます。

売上債権回転率

「売上債権回転率」は、売上高に対して「売上債権」をどの程度回収できているかを示し、売上(年間)÷ 売上債権(年平均)という計算式で求められます。

売上債権が大きいほど回転率は低くなり、小さいほど回転率は高くなります。つまり、回転率が高いほど、効率的に回収できていると判断できます。

反対に、回転率が低い場合は代金の回収に時間を要しているといえるため、キャッシュフローに影響が出ている可能性があります。

また、中小企業実態基本調査によれば、令和4年度の回転率の平均値は業種や企業規模によって異なっています(下記参照)。

業態 売上債権回転率(回)
業界平均 法人企業_51人以上
建設業 9.40 7.42
製造業 5.91 5.76
情報通信業 7.13 7.23
運輸業/郵便業 8.29 9.07
卸売業 6.48 6.19
小売業 12.21 11.79
不動産業/物品賃貸業 22.06 15.28
学術研究/専門・技術サービス 6.50 5.40
宿泊業/飲食サービス業 24.37 21.78
生活関連サービス業/娯楽業 14.86 18.08
上記に分類されないサービス業 9.14 9.33

売上債権回転期間

事業を展開する際には、商品やサービスの提供後から代金を回収するまでにかかる「売上債権回転期間」が重要な指標になってきます。

回転期間(月単位)は、売上債権(売掛金 + 受取手形 + 電子債権)÷(売上 ÷ 12)という計算式で求められます(日割りの場合は「365」で計算)。

回転期間は一般的に30日程度が目安となりますが、回転期間は一定するわけではなく、ある程度の変動が生じます。

また、中小企業実態基本調査によれば、令和4年度の回転期間の平均値も回転率と同様に業種や企業規模によって異なります。(下記参照)。

業態 売上債権回転月数
業界平均 法人企業_51人以上
建設業 1.28 1.62
製造業 2.03 2.08
情報通信業 1.68 1.66
運輸業/郵便業 1.45 1.32
卸売業 1.85 1.94
小売業 0.98 1.02
不動産業/物品賃貸業 0.54 0.79
学術研究/専門・技術サービス 1.85 2.22
宿泊業/飲食サービス業 0.49 0.55
生活関連サービス業/娯楽業 0.81 0.66
上記に分類されないサービス業 1.31 1.29

回転率および回転期間の詳細は下記リンクをご覧ください。

売上債権のリスク

後日まとめて請求して入金してもらう掛け取引にすることで、請求・支払いに関する業務を効率化できるメリットがあることは説明しましたが、この仕組みの利用にはデメリットも存在します。売掛債権での取引を扱う際は、「信用取引」ゆえ発生するリスクのほか、売掛債権に時効がある点に注意が必要です。具体的に解説します。

取引先との信頼で成り立っている

売掛を前提とした取引は信頼を担保とする「信用取引」であるため、売上債権を発行する売り手は取引先の信頼性を見極める必要があります。

倒産などで取引先が支払えなくなった場合、売上債権が不良債権化して損失が発生してしまい、自社のキャッシュフローが悪化する原因となります。

こうしたリスクを回避するため、特定の取引先を過度に信用して多く販売したり、得意先という理由で与信を実施しなかったりする行動は慎みましょう。

売掛債権には時効がある

2020年の民法改正によって、売上債権を含む多くの金銭債権は、基本的に「債権者が権利行使できることを知ったときから5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方が時効期間として適用されます。

売上債権の場合は実務上「5年」が基本で、時効成立は支払期限から起算されます。例えば、2025年1月にサービスを提供し、同年2月末支払いとして売上債権を発行した場合、2030年2月を時効として設定します。

売上債権が発生する取引先の管理方法

売上債権の回収は、企業の経営基盤を強固にし、財務の安定性を確保したり、事業の成長を遂げたりするために欠かせません。言わば、売上債権が発生する取引先との信頼関係が自社のキャッシュフローを左右するといっても差し支えありません。ここでは、売上債権が発生する取引先をどのように管理するべきか、詳しく解説します。

与信審査を行う

未回収リスクを低減するため、与信管理を軸とし、信用調査・与信限度設定・定期的なモニタリング・リスク管理を行います。

まず、取引先の信用情報を収集し、与信基準を策定します。その上で、定期的に信用状況を再評価し、必要に応じて信用枠や条件を調整します。

回収状況を正確に把握し、できるだけ早期に回収を進めましょう。また、リスク分散策として保険やファクタリングを活用し、取引条件の見直しも適宜行います。

与信審査の詳細は下記リンクでご覧ください。

売上債権回転率を確認する

売上債権回転率の確認は、取引先ごとの回収状況を可視化し、潜在的な信用リスクを洗い出す上で有効といえます。

例えば、回転率が低下している取引先は、支払い能力に問題が生じている可能性があるため、取引の条件見直し、もしくは縮小や停止を判断する必要があります。

回転率はキャッシュフローと関わる指標であり、経営の健全性を測るバロメーターにもなります。回転率をチェックしておけば、資金繰りへの影響を早期に察知できるでしょう。

売上債権の回収方法

売上債権の回収は、自社の運転資金を確保する上で必須です。取引先と事前に支払いの取り決めが必要になります。また、入金予定日に支払いが完了されていなければ、手順を踏んで回収しましょう。ここでは、売上債権を回収する際に覚えておきたいことを解説します。

売上債権の回収ルールを明確にする

ルールを明確にする理由としては、キャッシュフローの安定化、リスク管理の強化、内部統制の確保が挙げられます。

ルールが明確化された管理下では、早期の回収が促進されて運転資金を安定的に確保できるでしょう。明確な回収ルールを策定・遵守することで、不正行為や不適切な取引を避ける一助ともなります。

具体的には、売上債権が入金される期日までの期間(回収サイト)に加え、取引先ごとに売上債権を回収する際のルールを決めておくことが重要です。

反対に、ルールが不明確な管理下では、回収遅延や貸し倒れ、不正行為のリスクを抱えてしまう可能性があります。

売上債権の回収手順

  1. 1.請求書・納品書の発行・送付
    商品・サービスの提供後、契約条件に従って請求書または納品書を発行し、送付します。
  2. 2.支払期日の管理・モニタリング
    債権管理システムなどを使って取引先ごとの請求額・支払期日・支払状況を一元的に管理します。
  3. 3.支払遅延が発生した場合の対応
    支払期日を過ぎても回収できなかった場合は取引先に状況を確認し、状況次第では書面(督促状)を送付します。
  4. 4.社内で対応を協議
    一定期間を経ても支払われない場合は、取引停止や法的手段を含めた対応策を社内で検討します。
  5. 5.法的手段の準備と実行
    法的手段に入る前に最終通告を行い、法的措置を実行します。判決や和解調書が得られれば、取引先の財産に対する強制執行(差押え)により回収を図ります。

なお、代金が支払われない場合の債権回収方法や、取引先に支払い義務を通知する督促状の書き方は、下記リンクからご覧ください。

売上債権の入金がないときの対応

取引の見直し

取引条件の変更、取引額の縮小を含め、信頼関係の見直しを検討しましょう。取引先に警告を送っても、なお反応がない場合は、取引停止も選択肢の一つです。

売上債権を長期手形に変更

売上債権を受取手形に変換して、取引先の債務返済期間を延長する方法があります。なお、取引先の未払い金は、受取手形として会計帳簿上、流動資産または固定資産に計上します。

債権回収会社を利用

企業から未回収の債権を買い取り、回収する業務を展開している「債権回収会社」を利用し、自社に代わって回収してもらう方法もあります。詳細は下記リンクからご覧ください。

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「売上債権」を迅速に回収することは経営上、最重要の課題といえます。「売上債権」での取引にはメリットもあればデメリットもあり、リスクも伴います。取引先が多くなればなるほど、その業務負担は重くなり、企業にとっては悩みの種です。そんなときは、売上債権に関わる管理を請け負う外部サービスの利用を検討してみるとよいでしょう。

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