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統合報告書

社外取締役鼎談

新時代の金融サービスグループへの変革に向けガバナンス体制の強化を継続していきます

社外取締役(監査等委員) 松井巖 社外取締役 西野和美 社外取締役(監査等委員) 大庫直樹

オリコグループではコーポレート・ガバナンスの一層の充実をめざし、幅広い知見や経験に富んだ方々を社外取締役として選任しています。今回、これまで取り組んできた当社のガバナンス改革や今後の目標を率直に語っていただきました。

※鼎談内容は2023年9月時点のものです

当社は2022年度から中期経営計画がスタートしました。その策定プロセスから
関わられ、中期経営計画の内容や策定プロセスをどのように評価していますか。

松井:今回、中期経営計画策定に向けては、我々社外取締役も交えた取締役会メンバーで、自由に意見交換を行うオフサイトミーティングを数カ月間、集中的に開催しました。結果として、経営陣の意見だけでなく社外取締役との議論も盛り込んだ、新時代のオリコに相応しい事業戦略が策定できたと思っています。新時代の金融サービスグループへと変革していくオリコの方向性がしっかり示されていると考えます。

西野:そうですね。策定プロセスのなかで、改めてオリコはどのような会社で、どうあるべきか、そしてどこに向かうのかを、経営理念やマテリアリティを明確にし、各事業のポジショニングや評価軸の統一化なども含めて、我々を含めた皆で検討してきました。その結果、デジタル化などの外的環境の変容のなかで向かうべき方向性が定まったと評価しています。

大庫:今回の中期経営計画策定の過程では、オフサイトミーティングでの議論を通じて、リスクリターンとコストリターンの2つの軸で当社の事業を50以上のユニットに分解し、それぞれのポジショニングを注力・維持・縮退と明確に色分けしました。注力分野を決済・保証、海外と示せたことも大きな前進です。加えて、デジタル戦略の推進に向けて、正社員のほぼ全員がデジタル研修を受け、初級研修後に中級研修に進むことを1,000人以上の社員が志願したことは、明確になった戦略の下で、組織としてのスキル強化に社員がコミットしているのだと思います。私はここに当社のポテンシャルを感じます。

松井:マテリアリティに基づいた分析の結果、しなければならないことを明確にし、プライオリティをつけてめざす方向を可視化した素晴らしいプロセスだったと思います。

西野:当社の経営の重要課題であるマテリアリティは6つありますが、例えば、マテリアリティの一つ「金融ノウハウの活用を通じた新たな顧客体験価値の創造」については、新たな顧客開拓という視点で、社員一人ひとりがデジタルに関する知見を高め、新しいサービスを考える方向性が強化されています。もう一つのマテリアリティ「人材の多様性と育成および働き方改革」についても、人材の力を最大限引き出すための人材配置や報酬改定など、より働きがいのある環境づくりに向けて具体的に動き始めています。サステナブルな社会と当社のサステナブルな成長を両立させることをベースに、理念と連動した形でマテリアリティの網羅性も担保されていると思います。

大庫:金融サービスは、収益を長期視点で考えなければならないことに加え、例えば個品割賦とカードなど複数のビジネスラインが重なることで発生した収益・コストもあるため、収益管理やコスト分析などの管理会計は容易ではありません。中期経営計画策定の前哨戦として、財務・経理グループ長がこれまで現場を巻き込みながらコストの分解作業に注力されていたことで、コストリターンとリスクリターンが算出でき、それをもとに注力・維持・縮退などの方針を議論することができました。心を通じ合わせて一致団結するオリコの社風に、科学的な分析が加わり、皆で議論し合う良いモードに入っていると思います。

松井:そうですね。中期経営計画の立案段階から深く関与し、大きな責任を有する社外取締役として、経営陣が中期経営計画をきちんと実践していくよう、取締役会などを通じてしっかりと監視・モニタリングを行っていきます。同時に、積極的に意見を述べ、オリコの企業価値向上に寄与したいと思います。

過去のオリコと比べると、取締役会やオフサイトミーティングなどを通じてどのような進化を感じていますか。

大庫:私が社外取締役に就任した2014年の当時と比べると、今では社外取締役が5名に増え、それぞれの知見から多様な意見が出て、二重、三重に議論をし尽くした上で正しい方向性を見出せるようになったと感じます。取締役会資料もかなり改善されています。

西野:私は2019年からですが、分かりやすい資料を事前にいただけるほか、大切な議案は事前にブリーフィングもいただいています。また、オフサイトミーティングなど、様々な場で当社についての理解を深められる機会も多く、社外取締役が意見の言いやすい風土が醸成されています。

松井:取締役会で申し上げた意見は、真摯に受け止めていただき、後日、社内で再検討後、より前進した形の議案となって承認されたケースもあります。そうすると社外取締役としても、当社をより良い会社にしていこうと、更に職務にやりがいを感じますし、執行側と円滑なコミュニケーションが取れていることが、良いシナジーを生んでいるように思います。

大庫:そうですね。中期経営計画策定プロセスでも更に透明性が高まりました。一般的には、事業の縮退の議論は進みにくいものですが、2つの軸から縮退も覚悟すると吞み込んだことは、大きな前進だと思います。

西野:評価できる戦略が構築できた今、今後はそこに到達するための実行力が重要です。すでにデジタル人材の育成や人財戦略を通じて、社員の皆さんはスキルやモチベーションを高めています。執行側、管理職、社員が力を合わせ、あるべき姿に向かう過程で、社外取締役もそれぞれの専門や知見に基づいた助言などを通じて貢献していきます。

松井:戦略を一つの志と捉え、それを実現するのが戦術だとすると、戦術は知恵がカギとなります。当社には真面目で努力家で意欲のある人材が多く集まっていますから、社員の意見や知恵を吸い上げて経営に反映することこそが、経営の力です。最近取り組み始めた新たな事業分野での成功事例もありますから、今後生まれる新しいイノベーションにも期待しています。

大庫:「オリコはテックカンパニーになる」との声も耳にします。であれば、理系人材の採用増に加え、中途採用者やフリーランス人材など、多様なスキルやバックグラウンドを持つ人材が活躍できるオープンな環境づくりも大切です。

西野:そうですね。これまでの商習慣やビジネスのやり方にとらわれず、新しいサービス、更には新しいビジネスモデルを創り出すには、人材の育成や副業・兼業も含むオープンな働き方は欠かせません。そのなかで、次世代オリコの先進テックカンパニーとしてのビジネスモデルを創り出すことを期待しています。

当社のガバナンス体制についてはどのように評価していますか。

松井:昨年6月に監査等委員会設置会社へと移行し、執行による攻めのガバナンスと監査等委員会を中心とする守りのガバナンスが強力に組み合わさる強固なガバナンス体制になりました。社外取締役3名と常勤社内取締役2名の計5名から成る監査等委員会は、内部統制部門からの情報を通じた組織監査と、常勤監査等委員の実査も併せて行うことで、監査の効果を上げるべく努めています。ガバナンス体制変更後、一年で、制度がめざすところのガバナンス強化の実践が図られたと評価しています。

大庫:執行と監督の分離によって、代表取締役社長による決定事項が増えたことで意思決定の迅速化が図られたほか、取締役会での議論の内容が重要案件に集中し、より中長期を見据えた議論も増えてきました。大きく経営のモードが変わったと感じています。

松井:リスク管理、コンプライアンス、内部監査など、これまで以上に中身がよく見えるようになったほか、取締役会以外の場でも取締役とコミュニケーションを取る機会が増え、経営の妥当性を監査する上で役立っています。

西野:当社の監査はこれまでも監査役がしっかり進めてきていましたが、監査等委員会に移行後は監査等委員会が経営の妥当性評価についても踏み込んで実施し、詳細かつ独立性を担保した経営の監督ができていると思っています。また社外取締役が増えたことで、取締役会の多様性拡充につながっています。

最後に、ステークホルダーの皆様に向けて、一言お願いします。

西野:社外取締役の役割は、それぞれが社外の環境で培った知見や経験をもとに、客観的な観点から、当社の将来のために自分なりの意見を出していくことだと考えています。経営学やビジネスモデルを専門とする立場として、そして専門ではないものの一女性として、女性管理職比率の向上などの課題なども含め、当社のより良い将来に向けて貢献していきたいと思います。


大庫:社外取締役として10年目に突入し、独立性が薄れてきつつあるなかで、私はこれから先の10年に向けた引き継ぎの意味も込めて、自身のネットワークも活かしながら、新しい事業分野やDXなどを支援していきたいと思います。この1年の重要課題は、みずほ銀行との関係性であり、東証プライム市場上場企業として独立しながらも協調・連携する新たな関係を構築していくことが必要です。

松井:当社は長い歴史を持ち、社会的に高い信用の認められた会社ですけれども、それゆえに、逆に大きな前例や様々なしがらみに縛られる恐れがないとは言えません。しかしながら、今オリコに求められるのはまさに「 Transformation Now! 」なのです。私たち社外取締役は現在の中期経営計画の立案段階から深く関与しており、その意味で大きな責任を有しているものですから、経営陣がこの中期経営計画をきちんと実践していくよう、取締役会などを通じて、監視・モニタリングするとともに、積極的に意見を述べ、それによって当社の企業価値向上に寄与していくことが求められていると思います。
社外取締役の基本的立ち位置は、経営に対するモニタリングが中心であり、執行側とは良い意味の緊張感を持った関係を維持していきます。加えて広くステークホルダーの目線で執行側の経営判断に意見を述べることも社外取締役の役目ですが、当社はそれぞれ素晴らしいスキルを持つ社外取締役で構成されており、すべての社外取締役の持てる力を結集することにより、当社の素晴らしい力になります。私自身は法律の専門家として、特に会社不祥事や企業の危機管理などの観点から、引き続き目を光らせていきたいと思っています。